藤沢白門会・会報誌 (24号)

藤沢白門会の会報誌 (24号) に、平成4年卒の土屋恭之様の寄稿文が掲載されましたので、紹介させていただきます。

中央大学空手部から学んだ人生の素晴らしさ

 平成4年商学部卒/平成11年大学院総合政策研究科修了 土屋恭之

1.大学空手部入部
 中央大学空手部は日本本土に初めて空手道を普及させた沖縄県出身の船越義珍先生が、直接 中央大学空手部にご指導をされた戦前から続く伝統ある空手部です。私は昭和63年(1988 年)に中央大学に入学をしましたが、大学1 年生の頃は大学で何をするべきか。将来の自分の人生に悩む1 年間を資格試験の勉強やアルバイトで生活費を稼ぐ日々を過ごしていました。その後、こんな学生生活ではいけないと思い直し、大学2 年生になると1 年遅れのスタートでありましたが、中央大学空手部に新入部員(1 年生)として入部しました。

 中央大学学友会の多くの部活動は、高校時代に全国大会で活躍した選手のみが入部できる部活が多かったのですが、その中でも空手部はスポーツ推薦がなく大学から空手道を始める初心者がほとんどでした。その理由は中央大学空手部には優勝を争う競技試合がなく、船越義珍先生が空手道を競技スポーツではなく、紳士の武道を目指す人間教育の場として空手道を発展させたいという想いがあったからなのです。現在、多くの大学空手部が競技試合を実施しているが、その中でも中央大学、専修大学、学習院大学、成城大学等は社会で活躍する青年を育成し、立住な学生を社会に送り出す使命がある大学の理念を後押しする武道として、スポーツだけに片寄らせない文武両道の大切さを伝えることができる武道として一般学生に大きな影響を与えています。中央大学空手部は多くの卒業生を輩出し、その中でも高木丈太郎先輩(三菱地所元社長)、加藤博文先輩(地所ホーム社長)、弁護士、国家公務員総合職、公認会計士など多くの方が社会で活躍され、多くの職場で高い評価を受けられたことは何よりも船越先生の指導を忠実に守ってきた空手部の結果だと言えます。

 〇令和元年9 月 中央大学空手部夏合宿
 (福島県猪苗代) 筆者(右から5 番目)

 〇全体集合写真(師範、監督、学生及びOB)

2.空手指導者への歩み
 私が大学を卒業した後、25 歳の頃に地域の方々のために空手道の経験を活かして何かできることはないだろうか。そんな思いから辻堂駅の明治市民センターで空手サークル(名称:空手道孔仁門クラブ) を発足させました。いじめられている子供の問題に頭を抱える父母などに空手を教えるだけでなく、子供の育成に日々悩みました。しかしながら、昔いじめられていた子供が東京農工大で教師を目指す者、引っ込み思案だった性格の子供が自信を取り戻し、湘南高校に入学し今年東大を受験するなど、空手指導者の立場から貴重な経験を得られたことは良かったと思います。空手道の言葉の中に、「一生稽古」という言葉があります。これは空手道の稽古を生涯貫くという意味がありますが、もう一つの意味として「生きる」というテーマにつながります。それは人生を生きる事は大変である。しかし、「どんな事があっても、生きろ!」、先生方の私たちへの幸せに生きてほしいというエールではないかと思います。多くの友と稽古を行い、酒を飲みかわし、人生を語り合う。そして、先輩方の生き方から多くの事を学ぶこともできます。もし私が空手道との出会いがなければこれほどまでに充実した人生を歩むことは出来なかったのではないかと思います。

 最後に、みんなに会えてありがとう。そして、このような随想の機会を頂き、藤沢白門会の皆様に心から本当に御礼を申し上げます。

(参考) 空手道孔仁門クラブホームページ
https://www.bizsystem.co.jp/koujinmon/contents1.html

       〇平成30 年10 月 孔仁門クラブ演武後の集合写真(於:明治公民館)

出典:藤沢白門会 会報 (24号)