機関紙『松濤館』への記事掲載について(第207号)
松濤館が定期的に発行する機関紙にて、現部員の記事が掲載されていますので、この場を借りて紹介させていただきます。
機関紙『松濤館』については会員専用ページに転載しておりますので、そちらを閲覧ください。
807.9kmを超える繋がり〜広島支部訪問を終えて〜
中央大学文学部3年 可知あすか
3月23日(土)、私は同期3名と共に東京から広島へ向かいました。行きの新幹線ではわくわくと少しの緊張感がありました。広島支部に着くととても暖かく迎え入れていただき、緊張は少し和らぎました。16時から始まった稽古では、基本稽古、移動稽古、組手、型の稽古をしました。組手の稽古では瀧田師範から身体の使い方をご指導いただきました。例えば、相手からの攻撃を受けるには小指球を使い、こちらから力を伝えるときには母子球を使うということです。手のひら一つでも相手に当てる部分は工夫する必要があることを学びました。稽古の後には、山藤氏の昇段審査を見学いたしました。この昇段審査もまた緊張感にあふれたものでした。重みがありながらも伸びのある型には非常に感動いたしました。そうして2時間近くの稽古はあっという間に終わりました。
稽古後の懇親会では、広島支部の方々との交流をさらに深めました。そこでも空手の話は止まらず、自分の解釈を伝え、相手の解釈を聞いて新たに吸収する姿を見ました。印象に残っているのは裏の稽古のお話を聞きました。私は型の裏というものを知りませんでした。それから裏の稽古とは身体に染み込んだ型の流れをリセットできるものであると認識しました。どんな型でも順番を覚え、何度も何度も稽古しているうちに一つ一つの動きの意味を見失ってしまい、流れで動くようになってしまうというのは、私も稽古しているときに感じることでした。裏の稽古では次の動きをするために、その技の意味を考えるので型の本来の意味をもう一度考える機会が得られるということを知りました。空手部道場に戻ったら実践してみようと思いました。
他にも理不尽な暴力に遭遇した時のお話が印象に残っています。理不尽な暴力に遭遇した時に恐怖を感じることは当たり前のこと。ただしその時に心の中では素直に自分の恐怖心を認めることが大切である。下手に恐怖心を誤魔化そうとすると、それが表に出てしまい動揺が相手に伝わってしまうとお話いただきました。どんな場面でも自分の気持ちに対して素直になり、気持ちの変化を俯瞰して見ることで落ち着きつまり自然体を保てるのではないかと自分なりに考えました。
今回の広島支部訪問で感じたことは、大人になっても、時間が経っても学び続ける姿勢はとてもかっこいいということです。技の考え方は異なる部分があっても、新しいものをどんどん吸収しようと空手に向き合う姿勢は共通しているのだと感じました。またスポーツ空手ではなく武道空手であるからこそ、対抗心なく純に相手からの発見を吸収できるのだと考えました。私にとって3月23日は空手を通した人と人との繋がりを感じることができた日でした。空手によって物理的な距離を超え、繋がってきたことを感じられる貴重な経験ができました。広島支部の皆様、暖かく迎えていただき、とても有意義な時間をありがとうございました。
出典:日本空手道松濤會 機関紙『松濤館』第207号
近日中にOB会専用ページに掲載いたします。