機関紙『松濤館』への記事掲載について(第208号)

 松濤館が定期的に発行する機関紙にて、現部員の記事が掲載されていますので、この場を借りて紹介させていただきます。

 機関紙『松濤館』については会員専用ページに転載しておりますので、そちらを閲覧ください。

土佐支部訪問レポート

中央大学空手部 文学部2年 蓮見 海音

はじめに 

2024年6月15日から16日の計2日間を利用し、土佐支部と高知支部へ訪問また、稽古に参加させていただいた。学生からは空手部2年の千吉良、長嶋、蓮見、宮下の4名が参加し、普段多摩道場で稽古するだけでは得ることができない経験を積むことができた。本レポートでは土佐支部訪問での体験を3つの章にまとめ代表して述べさせていただく。 

1,土佐支部における稽古の概要 

稽古は14時から16時までの2時間の中で行われ、大人と子供同時に行われた。内容としては準備運動→騎馬立ち→追い付き→逆付き→型(太極初段、平安型)→組手というものであった。また、50年誌と松濤館の松風を見せていただき稽古終了直前には上丹田、中丹田、臍下丹田の特徴について教えていただいた。 

組手では平安二段の初動の動きを分解組み手で確認した。多摩道場では双方の腕は受けをしているという解釈だが土佐道場では受け→突きという解釈であり多摩道場での腕受けの部分は相手の顎を突きあげている動作だった。 

その後、土佐空手道会で行っている受けの組手を行った。多摩道場で行う組手では主に受ける腕と同じ足を前に出すが、土佐支部では受ける腕と反対の足を前に出す逆受けの形の組み手を行った。ぶつかりに行くのではなく、相手の力を受け流し、体格差があったとして対抗できるやり方を学ぶことができた。 

2.学生らの学び 

まず、学びになったことはガマクという場所を利用して、受け、突き、蹴りの動作を行うという事である。ガマクというのは肋骨の下の位置にあり、ここに力を入れることで腰と足が引っ張られ無の状態から一気に動くことができる。また、ガマクに力を入れることで蹴りの際も足の筋力に頼らず足を挙げることが可能になると学んだ。他にもガマク以外に軸足をなくすもう一つの方法として重力のコントロールについて教わった。これでも浮き身が可能となり、色々な技のバリエーションを出すことが可能になり、当日は、これを利用し、重心を下に落とし反力を水平力に変化させる寸勁を実際に体験した。これらの技術を習得することで技の範囲や技術の向上につながるのではないかと今後の稽古に展望を示すことができた。次に、学びになったことは肩から股関節を一つの大きな面として捉え体を動かす事である。肩と腰を捻るのではなく、面として体全体を捉えることで腕、足がバラバラに動くことがなくなり、動きに一体感が生まれ、力が分散することなく拳の一点に集中するのではないかとお話をうけて感じることができた。また、相手と相対したとき構え、全体を見る中で、最初に動く肩と拳を見ることを教わった。これは、普段多摩道場での稽古で監督からよくご指導いただく初動を起こさず攻撃に入る際の手掛かりになるのではないかと感じ稽古に生かしていきたいと思った。最後に最も印象に残ったのは、相手の攻撃を受け流すことに焦点をおいた組み手である。多摩道場では膝の力を抜き、相手の攻撃が来る前に相手の懐に入り攻撃を受けるという事を意識して行っていたが、土佐支部では膝の力を抜くというのは同じだが、相手の攻撃が来るまでぎりぎりまで我慢することを意識することを教わった。多摩道場では相手の攻撃よりも早くという意識であったが、土佐支部では相手の攻撃を自らが引き出し受け流すという意識ではないかと学ぶことができた。 

3.今後の稽古にて 

今回支部訪問を経験し、様々な解釈に触れたことで、空手という武道の世界の広がりを強く感じることができた。例えば、土佐支部での稽古で人体の構造を踏まえて行われていたが、今まで人体の構造を意識したことがなかったので、このような視点もあるのかと衝撃を受けた。分解組手の際、人体は多くの関節で出来ており関節を押さえるか動かなくすると、人を制することができると教わり実際に学生の肩の手前を押さえて、攻撃を行えない事を体験し、技というのは力だけで出すのではないと身をもって体感することができた。これ以外にも土佐支部で学んだことを多摩道場の稽古で生かせそうなところは生かし、自分たちの中で技の解釈をさらに深める手掛かりにし自分の技のポテンシャルを引き出すきっかけにしていきたい。まずは、体を一つの面として意識するなど小さなところから稽古に取り入れていきたい。 

出典:日本空手道松濤會 機関紙『松濤館』第208号 (令和6年11月30日)