空手部OBOGインタビュー (第6回)

空手部を卒業されたOB・OGの先輩にインタビューする本企画。2022年度も継続して先輩方に貴重なお話をお伺いしていきます。第6回目は、令和4年卒業生の大泉光先輩にお話を伺いました。

聞き手:理工学部2年 高橋正樹 (埼玉県春日部高等学校出身)

Q1. まずは自己紹介をお願いいたします。

令和4年卒業の大泉光です。法学部政治学科に在籍し、空手部では4年時に主将と学連委員長を兼任しておりました。

この春から、群馬県にある女子少年院で法務教官として勤務することになります。法務教官というのは耳慣れない職業だと思いますが、少年院や鑑別所で非行少年の改善更生に携わる法務省の専門職員です。平たくいえば、少年院の先生です。実はこの記事を書いているのが3/31で、明日から社会人としての生活がスタートします。緊張や不安もありますが、失敗や人との衝突を恐れずに、私らしく真正面からこの仕事に向き合っていきたいと思います。

Q2. 空手部にはどのような経緯で入部されましたか?

小学生から中学生にかけて、地元の道場で沖縄空手をやっていました。高校ではソフトボールをやっていたのですが、大学に入学し、また空手をやろうかなという気持ちになり、空手部の存在を知って道場を訪れたのが始まりです。

Q3. 現役時代、特に力を入れていたことを教えて下さい。

自分の中で、特にこれを頑張るぞと意識していたことはあまり無かったように思います。ただ、四年間を通じて、目の前のやるべきことを必死にこなしていたら、いつの間にか卒業してしまったという感じです。学年が進むにつれて、自分のレベルや部の中での立ち位置も変わっていくので、その時その時に自分に必要なことを考えて行動していくことが大事かと思います。

私自身、卒業する頃になってようやく、松濤會の空手というものが少しだけ分かるようになってきたかな?という実感があったので、全体が見えてくるようになるまで数年はかかるものだと思って、少なくとも一、二年のうちはあれこれ考えずにひたすら先輩の話をよく聞いて、実際に体を動かしてみることが一番だと思います。

また、これは学連委員をやってみて感じたことですが、いつも同じメンバーばかりで稽古するのではなく、可能な限り色んな人と一緒に稽古したり、稽古できずとも空手の話をするだけでも、とても良い経験になります。例えば、突きひとつとっても、効く突きとはどのようなものかを捉える視点、表現の仕方は人によって大きく変わってくることがあります。ある人に聞いてピンと来なかったことが、別の人の説明で腑に落ち、「あの人の言っていたことはこうゆうことだったのか!」と理解できる瞬間が沢山あります。

松濤會の空手は老若男女できる空手だ、とよく言われますが、これは全員が同じようにすればいいということではなく、個々の特性に応じて自分の可能性を引き出すことのできる空手だということだと思います。性差、体格差、柔軟性、筋力、体幹、性格など、様々な要素が組み合わさってその人に固有の個性というものが見えてくると思うので、自分の特性を理解し、その良さを活かした空手を突き詰めていくのが良いと思います。

松濤會には様々な人と関わることのできる環境があるので、ぜひ積極的に関わりを持ってみてください。

Q4. 逆に空手部で稽古していくなかで苦労されたことは何でしょうか?

最初の頃は、元々やっていた流派の癖が抜けないことに苦労しました。経験者として空手部に入部した人にとっては、多少共感できるところだと思います。この点で苦労している後輩には、「初心者のつもりで稽古する」ことが最も大事だと伝えたいです。

そのつもりでやってます、という人もいるかもしれませんが、自分では無意識のうちに、もともと自分の中にあるものを修正する形で稽古している人も多いと、幹部になって感じました。別の流派で同じ型をやっていた場合など、特に顕著です。最初のうちはそれで満足できるかもしれませんが、個々の技のみを修正していくだけでは、松濤會の空手をできるようにはならないと思います。受けも突きも蹴りも、独立して存在するわけではないからです。立ち方、拳の握り方、移動の仕方など、基本的なことを理解し習得して初めて、技に体重を乗せるという一つの目的にたどり着くことが出来ます。なので、新しい型を覚えることよりもまず、基本技がしっかりできているかどうかを見つめ直し、黒帯を取得した後であっても時折そこに立ち返ってみることがとても大事です。

かく言う私も、四年の最後の最後まで、後足への意識が薄い、前のめりになる、などなど課題が山積みでした。指摘してくださる先輩がいるうちに、沢山稽古して、自分の弱点と向き合ってみてください。

Q5. 大泉さんはどのような人が空手部に向いていると思いますか?

難しい質問ですね。(笑)人の言うことをまっすぐ受け止められる、素直な人じゃないでしょうか。あとは、自分の弱さを受け入れて、バネにして努力できる強さもあればなお良いです。そうゆう力は空手以外のことにも活きていくと思いますし、人として成長し続ける為にも不可欠であると思います。

Q6. コロナ禍の中でも主将として1年間部を先導した感想をお願いします。

空手部にいた四年間のうち、圧倒的に充実していたのが主将をやっていた一年間です。三年生になった時にちょうどコロナ禍が始まり、新入部員をほぼ入れられないまま一年空白ができたような状態で自分の代を迎え、今年こそは絶対に部員を入れなければならないとのプレッシャーは非常に大きく、また学生連盟の運営や日々の稽古の指揮、加えて自身の就職活動や大学の授業、アルバイトと、正直やることが多過ぎて精神的に参ってしまうことも多々ありました。なんとか乗り越えて自分の役目を全うし、しかも希望の就職先に決まったのは奇跡に近いと思います。私自身も気づかない所でも多くの人に助けて頂いたと思います。この場を借りて改めて感謝をお伝えしたいと思います。

一年間、常にギリギリの状態でやってきた私ですが、その中でも同期と後輩の存在は本当に支えになっていました。道場に行けば皆がいて、主将主将といって慕ってくれる後輩がいて、落ち込んだ時に電話で朝まで相談に乗ってくれる同期がいて、本当に宝物のような存在です。空手部のことはもともと好きでしたが、主将をやらせてもらって、もっと大好きになりました!空手部に入っていなかったら、私の大学生活はまったく味気ないものになっていたと思います。

コロナ禍ということで合宿も演武大会も実施できず、通常とは違う形で終えた大学生活でしたが、どんな状況でも熱意と工夫、そして行動力があればどうにかなると思います。まだ暫くコロナ禍は続くと思いますが、後輩達には空手部の伝統を絶やすことなく繋いでいって欲しいと願っています。

Q7. 最後になりますが、これから入部してくれる未来の後輩たちにむけて一言メッセージをお願いいたします。

空手部に入部してくれてありがとうございます!空手部に入って良かったと思えるか否かは、自身が空手部生活をどれだけ全力で全うし、かつ楽しむことができたかにかかってくると思います。そしてそれは、待っていたら誰かがやってくれるわけではなく、自分次第です。まず自分が道場に来る、あまり来ない後輩がいたら声を掛けてご飯にでも連れていく、ノリの悪い同期がいたら全力で絡みにいく、先輩には自分から教えて貰いにいく、出稽古に行ってみる、飲み会や同期会は自分が企画する、主将には自分がなる!くらいの気持ちでぜひ貪欲に、空手部という環境を謳歌してください。在籍しているだけではあまりに勿体ないです。いつでも応援しています。いつかOBになった皆さんと一緒にお酒でも飲めたらとても嬉しいです。